機能性金属錯体の開発
金属錯体は、金属イオンと有機配位子からなる無機・有機複合材料です。金属イオンと多様な分子構造を有する有機配位子を組み合わせることで、光学特性、電子特性、磁気特性など、さまざまな機能を有する新しい材料を設計・合成することができます。金属錯体が連結して一次元、二次元、三次元へと拡張した構造を形成する材料は配位高分子(Coordination Polymer)と呼ばれます。特に規則的な細孔構造を有するものは金属有機構造体(MOF:Metal–Organic Framework)として知られており、2025年に京都大学の北川進先生がノーベル化学賞を受賞されたことにより、広く社会的な注目を集めました。配位高分子やMOFは、ガス吸着・分離、触媒、発光材料、半導体材料、電池材料など幅広い分野への応用が期待されています。
当研究室では、配位高分子およびMOFの設計・合成を行い、その構造と物性との相関を明らかにするとともに、発光材料、半導体材料、エネルギー変換・蓄電材料への応用に関する研究を進めています。特に、電気伝導性を示す配位高分子の開発に取り組んでいます。一般に、配位高分子は絶縁体であることが多く、電気伝導性を発現する材料は限られています。当研究室では、ハロゲン化銅や金属ジチオカルバマートなどの金属錯体ユニットとさまざまな有機配位子を組み合わせることで、多様な電気伝導性配位高分子を開発しています。また、電気伝導性、発光特性、誘電特性などを評価し、分子構造と物性との相関について研究しています。
例えば、当研究室で開発した下図の配位高分子は、一価銅イオン(Cu(I))と二価銅イオン(Cu(II))が共存した三次元骨格構造を有しており、この骨格中を電荷が輸送されることを明らかにしました。また、インピーダンス分光法や時間分解マイクロ波伝導度(TRMC)測定により、その電気伝導特性やキャリア輸送特性を評価しています。現在は、このような新しい構造を有する電気伝導性配位高分子について、電気伝導性、誘電特性などの物性評価を行うとともに、電界効果トランジスタ(FET)や太陽電池などの電子デバイスへの応用可能性について研究しています。
以下は、本研究で開発したCu(I)/Cu(III)混合原子価金属有機構造体(MOF)の結晶構造、光吸収特性、半導体特性、およびリチウムイオン電池特性を示したものです。本材料は広い光吸収領域と半導体特性を有しており、さらにリチウムイオン電池の正極材料として利用できる可能性を示しました(リチウムイオン電池特性の作製と評価は、関西学院大学・吉川浩史教授との共同研究として実施しました)。
以下の様な、ハロゲン化銅(I)を骨格に含む配位高分子は、発光性と電気伝導性を併せ持つ特徴を有しています。当研究室では、このような配位高分子の設計・合成を行い、発光特性、電気伝導特性および光導電特性を評価するとともに、電子状態計算を用いて発光機構や電荷輸送機構の解明に取り組んでいます。さらに、これらの知見を基に、新たな機能性材料の開発を進めています。





