有機薄膜太陽電池
有機薄膜太陽電池は貴金属を使用しない環境に優しい軽くフレキシブルな次世代太陽電池です。この有機薄膜太陽電池はプラスチック基板上にロール・ツー・ロールなどの低温印刷プロセスを利用して安価に大量生産できることから、ユビキタスな電源装置としての幅広い用途への応用が期待されています。特に、半透明有機薄膜太陽電池は、その意匠性と軽量性を生かすことで、ビルの窓ガラスやブラインド、マンションのベランダの手摺、ビニールハウスなど従来のシリコン太陽電池では困難であった場所への応用が期待されています。

有機薄膜太陽電池は有機半導体層を電極で挟んだ素子構造をしています。有機半導体層は一般にp型半導体であるドナー性ポリマーとn型半導体であるアクセプター性分子を溶液中で混合し、基板上に塗布することで作製します。このとき、p型半導体とn型半導体が数十ナノメートルサイズのドメインを形成することで光励起によって生じた励起子がp型半導体とn型半導体界面に効率よく到達できるために、生成するキャリアの量が増え、効率の良い太陽電池になります。一般にはp型半導体としてP3HTの様なドナー性のポリマーが、n型半導体としてフラーレン誘導体であるPCBMの様なアクセプターが用いられますが、現在様々な有機半導体が合成され、効率が向上し続けています。

特に最近では、非フラーレンアクセプター(non-fullerene acceptor)を用いた有機薄膜太陽電池が注目されています。これまで有機薄膜太陽電池のn型半導体(アクセプター)には、主にフラーレンと呼ばれるサッカーボール構造を有する炭素材料が用いられていましたが、この誘導体は伝導性に優れているものの、可視領域の光を吸収せず、光電変換にはほとんど寄与していませんでした。そこで、強い光吸収特性を持つ非フラーレンアクセプターの利用が提唱され、近年有機薄膜太陽電池の高効率化に貢献しています。また、3つの有機半導体を用いて更に高効率な有機薄膜太陽電池の作製も可能であり、このような三元系ブレンド有機薄膜太陽電池の研究も活発に行われています。

本研究室では、薄膜太陽電池に応用可能な新たな有機半導体の合成と、それらを用いた有機薄膜太陽電池の作製と評価を行っています。また、発光性配位高分子を用いた新しい薄膜太陽電池の開発も行っています。


特に最近では、重原子を含む金属錯体の合成と、有機薄膜太陽電池材料への応用を試みています。重金属を導入することで、電荷分離効率の向上やキャリア再結合の抑制が期待でき、これまでの軽元素のみを用いた薄膜太陽電池では達成が困難であった高効率化の実現を目指しています。

有機ペロブスカイト太陽電池
有機ペロブスカイト太陽電池は、メチルアンモニウムなどのアンモニウム塩とハロゲン化鉛からなる有機・無機複合材料(有機ペロブスカイト)を用いた次世代の太陽電池です。この有機ペロブスカイトは光吸収効率が高く、キャリア(電子と正孔)の生成効率も優れているため、単結晶シリコンに匹敵する高い光電変換効率を実現します。本研究室では、この有機ペロブスカイト太陽電池の高効率化に向けて、新たなホール輸送材料の探索を行っています。
